デイ・サージェリーについて

今日、医療経済では国民医療費の高騰が国家財政を圧迫する危機感から医療費の削減が叫ばれており、患者さん側からも世の中の多忙化や不況によるリストラの心配からか、入院での治療を敬遠もしくは期間の短縮を望まれる傾向が現れています。

肛門疾患の手術は、以前から痛みがひどいため、自宅での療養は不可能であり、手術・麻酔・入院があたりまえと考えられていました。

しかし、近年では手術法の変化や麻酔法の改良によって、肛門疾患でも日帰り手術や短期入院手術が次第に普及してきています。

今回は、そうした肛門領域のデイ・サージェリーについてご説明しましょう。

デイ・サージェリー(DS)とは

《 デイ・サージェリーの定義 》

•従来の治療では手術後ある程度の入院期間を要していた疾患を対象に、新しい治療法等を採用することによって、手術当日または早めに帰宅させるものを言います。
ただし、外来で行う切開・排膿や血栓除去等の処理は除きます。

《 医療側の利点 》

•入院準備が不要なため、診療の場ですぐに治療法を決めることができます。
•診断と治療が同じ医師で可能です。
•手術に大掛かりな設備が不要になり、簡単な道具で行うことができます。
•全身麻酔が必要なくなります。
•手術後の管理が比較的容易です。
•手術後の合併症が発生することが少なくて済みます。

《 患者側の利点 》

•入院せずに済むので、仕事や日常生活にあまり影響なく治療ができます。
•入院準備が不要のため、早く治療することができます。
•費用が少なくて済みます。
•手術の痛みも比較的軽く済みます。

日帰り手術の適応疾患

日帰り手術の適応疾患は以下の種類があります。

種 類 適応疾患 非適応疾患
痔核系 Ⅰ~Ⅱ度の痔核
粘膜脱で2箇所までの結紮切除
全周性脱肛
嵌頓痔核
痔瘻系 後方の筋間痔瘻
(lay openできるもの)
単純な高位筋間痔瘻
Ⅲ・Ⅳ型痔瘻
Ⅱ型痔瘻 括約筋温存手術
裂肛系 中程度までの狭窄に対する
内括約筋側方切開(LSIS)
高度狭窄でSSIを要するもの
その他 スキンタグ
肛門ポリープ
尖圭コンジローマ
  -

痔瘻に対する「Seton法」

この治療の原理である痔瘻の瘻管に紐を通して治す方法は、古くはインドで紀元前600年に薬物を沁み込ませたクシャラ・スートラを使用したものに始まります。

その後ヨーロッパでは、ヒポクラテスの医学書に馬のたてがみで作った紐を使って痔瘻の治療をしたという記録が残っています。

また中国では、掛線(桂綫)と称して、古来から行われてきた治療法でした。

日本でも中国から伝播され、江戸時代以前から紐通し法と呼ばれ、紐の材料に動物の毛や蜘蛛の糸などを使っていました。

さらにいろいろな材料に腐食性の薬剤を染み込ませての薬線療法して、医者の秘伝として伝承されてきたようです。

1933年、畑 嘉聞が痔瘻の結紮療法にゴムバンドを提唱しました。

しかし、残念ながら昭和40年代以降、西洋医学に対する古典的療法は、懐疑的で非科学的であるという理由から、肛門外科の領域から排除されてしまいます。

中国や日本で伝承された古典的な外科療法は、結紮や腐食で病変部を除去することを原則としており、中には排除しがたい論理にかなった合目的な方法として、近年の科学的な技術や道具との組み合わせによって再評価されるものが表れました。

その1つが、痔瘻に対する結紮療法であり、欧米ではSeton法と言われている方法なのです。

Seton法のイメージ
ゴムを使ったSeton法

まとめ

  1. 肛門領域のデイ・サージェリーは、今後増加することが予想され、患者さんのQOLにとって最良の方法としてお勧めしています。
    (QOL:Quolity Of Life =人々の生活を物質的な面から量的にのみとらえるのではなく,精神的な豊かさや満足度も含めて,質的にとらえる考え方。医療や福祉の分野で重視されている。生活の質。生命の質。・・・デイリー新語辞典より)
  2. 痔瘻に対するSeton法は、デイ・サージェリーに最適な術式と考えています。
  3. 開院より2023年12月31日までの387例に対してseton法での治療を行った結果は、再発なく良好な成績を認めております。